Memo

心ん中が真っ暗になると

食べ物の味がしなくなってしまうって知っている。

味もしなければ、食べる気すら起こらない。


どんな素敵な風景に出合っても、誰が一緒に居てくれたとしても

沢山のキラキラに触れても、何も感じられなくなってしまうのだ。


暗闇が晴れるまでは、

もがいても あがいても その凍りついた心が

感覚を奪いさってしまう。

そうなると、生きているのか死んでいるのか

疑わしくなってきて、空虚さに泥水がめを伝ったりする。


胸の中の悲鳴が 止まらなくなる。


だけど、時が経ち、やっぱり心は変化していく。*1


新しい風にさらわれる。

何も無くなった心に、そいつが吹き込んでくる瞬間がやってくる。

ただ ただ しみ渡り 心を掬いあげてく。

感じる心がすべてだとすら想う。

幸せを味わう感覚から逃れたい、いらないのだと 抗っている心が

くだかれていく。くだいていく。

救うかどうかを決めるのは、たったひとり自分だけ。

ひとりきりでしかそこには辿り着けない。


記憶が刺激されるたび、めめに水がにじむ。

終わったこと、それでも忘れないことを、決めた自分がいるから

過ぎた記憶に幾度でも襲われる。

胸がそのたびに痛むのは、そう望むからだ。


悲しみや傷ついたかたまりを

刻み込んで忘れずに生きたいと思う。


経験があったところで

誰かの心をまるごと解り切ることなど出来ない。

無力な心で、ただそばに居る。

真っ暗闇の心にくっついている胃袋には

断然、うどんがいい。*2


そいだから、お昼一緒にうどんを食べに、外に出た。

細胞が燃え からだの中があったかくなり

あのコが少しでも他の何かを感じる心を取り戻せるといいと思う。

食欲を失い、急激にやせてしまった あのコの心に

どうか キラキラの風が吹きますように。

掬いあげられて、救うことを決められますように

取引先の方に、リュックいっぱいの栗をもらったのだとメールが届く。

ぱんぱんになったリュックの中身が

実は、栗だなんて 可愛らしい。

電車に揺られる疲れた背中の後ろを想像して、やわらかい気持になる。

*1:時間に解決されてしまうだなんて、切ない。

*2:ばななさんが小説に幾度も書いていらしたこと。