Memo



さいごの日。


一日を、三年半を

そっと静かに終わること

手紙を皆に渡すことさえ出来れば

それでいいと思っていた。


定時過ぎ、もうしばらくしたら

皆にマカロンを配りにまわろうなんて

考えていたら


灯が消えてそれからあかるくなって


むらさき色の花束と

アナスイの可愛い贈り物を

大切なふたりから

手渡しをして、いただいた。


この場を俯瞰しているみたいに

遠くからみていた。

ちっとも、実感がわかない。

口から紡ぎだされる言葉を

自分で噛み砕くことができない。


さよならは言いたくないねと

言ってくれたこと。


お誘いいただいたけれど

皆、お昼も食べんと

まだまだ終わらない仕事を抱えている中で

アルコールやおいしいごはんを

いただくわけにはいかなくって

お礼だけ言ってお家に帰ることにした。


ボロボロ涙を流してくれた

だいすきな後輩のコ。

まだそんなに

したしいわけじゃないのに

ごめんなさいと言って涙をツーっと

流してくれた新人のコ。

みんなみんないいコだべな。


ありがとうとごめんなさいを想う。


電車の中、

お花の匂いを吸い込みながら

涙目で、いろんな考えごと。


ぐんぐんあたまが痛く重くなってきて

早く早く恋人のやさしい顔がみたいと

想いつめながら、家路を急いだ。


お家に帰り、本日不在だった上司に

お礼の連絡を入れ、

お花ひとつひとつにチューをしたり

持ち帰った荷物を片付けたりしているうち

気づいたらしゃっくりをあげて

泣き出していた


ひとつ大きな何かが

終わりを迎えてしまったと想った。


失ったものはたくさんある

得たものもたくさんたくさん。


経験を身に刻んだ。

一生ものの大事な出逢いに感謝する。

どちらももう

わたしというかたまりから

切り離すことの出来ないとうといもの。


それでもこれは喪失だと想った。


大きなかたまりがズッシリと

重くからだに入り込んで来て

逃げられないのだ。

どうしようのない喪失感に襲われて

呼吸がうまく出来んくなった。


もしこれが

喪失なら脱け殻になるハズなのに

からだがぐんぐん重たくなっていく


三年半分の気持?

言葉にならない涙でビシャビシャになる


スノースマイルのインタビューで

基央くんが

喪失を獲得したと言っていた。

切り取ったその言葉だけが

ふと思い浮かぶ。

失ったわけじゃない。

サヨナラなわけじゃない。

それでも少しだけ、ソレに近いと思う。


またまぶたはれちゃうよ

電話越しに、ダーリンが

優しい口調でわらって言うので

わたしも泣きながらわらった。


山ありあり谷ありありの怒涛の日々

最後は胸がズキズキ痛みながらも

ゆるやかに、心穏やかに

送らせていただいた。


ありがとうございましたと

深く深くおじぎをしていたい気持。


夜、ピザをふたりで頬張った。


恋人がそばに居てくれて

本当によかった。